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Kein Entrinnen.
山接ぎ(やまはぎ)と股接ぎ(またはぎ)、今では聞きなれない言葉かも知れない。
どちらも「接ぎ」と言うから継ぎ接ぎと言うことになる。
私が修業時代(昭和30年代後半)の頃は、オーダーの型紙はかなり不正確なものであった。
親方が裁断しているのを記憶しているが、誰かの有り型を生地の上に置き、寸法に合わせて出したり詰めたりしながらチャコ(テーラーズ・チョーク)を入れていく。ほほ直裁ち(じかだち)状態であった。そのように裁断は大雑把であっても、仮縫いし補正で体型に合わせていくので最終的にはつじつまが合っていく。
更に縫製で修正しながら縫っていくと言うように、職人の腕に負うところが大きかった。
当時、毛織物の価値が高く背広上下または三揃いでも一着の所要尺は2.7mであった。これはイギリス式のヤード(ヤールとも言う)と言う織物を計るときに用いる長さの単位からきていて、3ヤール(91cm×3=273cm)と言うことだ。今では、3mが普通の着要尺だが、昔は3ヤールに収めるのが裁断士の腕であった。ところが小さめのお客さんのは問題ないが、身長の高いお客さんのは要尺が厳しい。
まして昔のズボンはウエストベルトの切り替えが無い(オビ無し)。また、ズボンの後ろ中央縫い目上部は、機能性のため斜めに高くするのが普通である。この斜めの山形部分が長さにとって致命的なのである。
そこで、斜めの部分をヨコ地の目に沿って切り替える。接ぎ部分は取れるスペースのところで裁断し、それを接ぎ合わせる。つまり山接ぎして一枚の後身頃にするのだ。![]()
このように山接ぎは、要尺節約の苦肉の策であった。それがジーンズにおいては後ヨークとして健在だが、スーツにおいては今では見かけなくなった。一方、太ったお客さんの場合もテーラー泣かせである。
生地幅は152cm(これもイギリス式の60インチからきている)が普通であり、型紙を差込んでも太った人の横幅は余分にかかるので要尺に収まらない。
その中でもズボンの後ろ内股の斜めに飛び出す部分が一番ネックである。そこで飛び出す内股の三角形の部分をタテ地の目で切り替えると要尺に収まっていく。これが股接ぎである。
このようにタテには山接ぎ、ヨコには股接ぎをして、要尺を節約するやり方が当時はよく行われていた。今では一着3mカットが普通であり、大きい人は3.3m~3.5mを使い、接ぎは御法度である。ところが美脚パンツと称して、あえて股接ぎをしている商品を目にした。勿論、生地節約のためではなく接ぎ部分の地の目を替える事によって機能性を出すとの事なので、それはそれとして理解できるが、私にとって昔の股接ぎを思い出させる事となった。